CASE STUDY

相続

母から土地を相続したのですが、母は以前から叔父に土地を無償で貸して、叔父が土地上に家を建てて住んでいました。以前は土地の固定資産税を叔父が払っていたのですが、私が相続してから叔父はもう固定資産税は払わないと言い出しました。私としてはいっそ土地を更地にして返してもらいたいのですが、どうすればよいでしょうか?

【ご相談者】岩見沢市 40代男性(会社員)

解決結果

訴訟を提起して、固定資産税を支払わないことを原因として土地の使用貸借を解除したことが認められ、土地の明渡しをする旨の和解が成立しました。

物を貸し借りする場合、賃料を支払うなど有償で貸し借りすることを『賃貸借』といい、無償で貸し借りすることを『使用貸借』といいます。
使用貸借は、親族間など特別な人間関係がある場合によく行われます。
しかし、相続が発生すると、元の人間関係から変化するため、使用貸借を維持するのが困難となるケースがあります。
本件でも、相続をきっかけに借主が固定資産税を払わないと言い出し、貸主ももう土地を貸す理由もないので更地にして売却処分したいと考えるようになりました。


この点、使用貸借には借地借家法の適用はなく、賃貸借のように賃借人保護は強くありません。賃貸借の場合は債務不履行があっても信頼関係が破壊される程度にまでならないと契約解除は認められませんが、使用貸借の場合はそのような制限はありません。
そして、不動産の使用貸借の場合、固定資産税は「通常の必要費」(民法595条1項)として借主が負担するべきとされています(最二小昭和36年1月27日判決、東京地裁平成9年1月30日判決)。
本件では、借主である相手方が固定資産税の支払いを拒否していることに争いが無かったため、この点を理由に債務不履行による解除を請求しました。


訴訟の中で裁判所から使用貸借の解除が認められる旨の心証が開示されました。
その上で、一定の猶予期間を経て相手方は建物から退去し、建物を取壊して更地にして明渡す旨の和解が成立しました。

 


【執筆者】

弁護士 佐瀬達哉

東京と大阪で弁護士として勤務した後、2008年から札幌で葛葉法律事務所を開所。
離婚、相続などの家事事件に関する解決実績多数。
相続では使途不明金や共有不動産に関する訴訟案件などにも対応。

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