CASE STUDY

相続

父が他界し、相続人は私を含めて父の子である3名です。 預貯金は3等分で分ければいいとして、遺産の中に不動産があるのですが、不動産はどのように相続すれば良いでしょうか。

【ご相談者】札幌市 30代女性(会社員)

解決結果

不動産の相続としては、①売却処分して売却代金を分割する、②希望者が不動産を単独で相続して他の相続人に代償金を支払う、③不動産を全相続人が共有で相続する、の3通りがありますが、それぞれ注意が必要となる場合があります。

遺産の中に不動産がある場合、預貯金のように単純に金額で分割することができません。
不動産の遺産分割の方法は、大きく分けると以下の3通りになります。


①不動産を売却処分して売却代金を分割する。

基本的には、全相続人が不動産を一旦共有で相続し、全相続人が一緒に不動産業者に売却処分を依頼する形になります。
まずは遺産分割協議書を作成して、「不動産を売却処分すること、売却代金から経費等を控除した残額を法定相続分通りに分割すること」を合意してから進めるのが基本です。

ただし、売却できる不動産であることが前提となります。
そのため、何もない原野等、そもそも買い手がつかないような不動産の場合は難しいです。


②希望者が不動産を単独で相続し、他の相続人に代償金を支払う。

不動産を取得することを希望する相続人がいる場合は、その希望者に不動産を単独名義で相続させることができます。
その場合、希望者は他の相続人に対して、本来であれば他の相続人が相続できた不動産の持ち分について代償金を支払う必要があります。もし遺産として不動産の他に預貯金等があるのであれば、遺産の預貯金等を差し引きして代償金を清算することができます。

しかし、希望者にとっては不動産の評価額が低い方が代償金が少なくて済みますが、他の相続人にとっては不動産の評価額が高い方が代償金が多くなります。そのため、不動産の評価額をいくらとするかで争いになることもあります。
不動産の評価額が争いになると、最終的には家庭裁判所の遺産分割調停の中で『鑑定』を行うことになります。鑑定では裁判所の選任する不動産鑑定士が不動産の評価額を算定し、基本的にはその算定額に従って処理されます。


③不動産を全相続人が共有で相続する。

①と②のどちらの方法もできない場合、最終的には全相続人が法定相続分に従って共有で相続することになります。

しかし、不動産を共有で相続すると、将来的に共有者が増えるなどして権利関係が複雑となるため、後々になって紛争化するリスクがあります。
そのため、できる限り不動産を共有で相続するのは避けるのが望ましいです。
誰も相続することを希望しない不動産がある場合でも、基本的には誰かの単独取得とし、その代わりに代償金は無しとする、というような相続が行われることが多いです。

 


【執筆者】

弁護士 佐瀬達哉

東京と大阪で弁護士として勤務した後、2008年から札幌で葛葉法律事務所を開所。
離婚、相続などの家事事件に関する解決実績多数。
相続では使途不明金や共有不動産に関する訴訟案件などにも対応。

一覧へ戻る