CASE STUDY

相続

父の生前に弟が父から300万円をもらっていたはずなのですが、弟はしらを切っていて認めようとしません。弟には300万円の特別受益があると認められないのでしょうか。

【ご相談者】石狩市 80代男性(自営)

解決結果

弟は300万円の贈与を否定していましたが、当方から父が弟に300万円を贈与したことを裏付ける資料を提出し、審判で弟に300万円の特別受益があることが認められました。

被相続人の生前に贈与を受けた相続人がいる場合、その贈与は特別受益として遺産分割において清算することになります。
しかし、相続人が贈与の事実を否定している場合には、特別受益があったと主張する側で贈与がなされたことを立証しなければならず、現実問題として立証が難しい場合も多いです。

本件では、父の日記に弟に300万円を上げた旨の記載があったこと、その日記が書かれた数日前に父の口座から300万円が引き出されていたことをそれぞれ証拠として提出しました。
日記の記載だけでは贈与の事実の裏付けというには足りない恐れがありましたが、日記を書いた日の直近に実際に預金を引き出していたことが明らかにできたことが大きかったです。


また、特別受益とされるためには『生計の資本』として贈与されたものであることが必要です。
この点、金銭の贈与の場合は、少額のお小遣い程度であれば特別受益とはなりませんが、一度に高額の贈与がなされた場合には、基本的に生計の資本としての贈与に該当すると解されます。
そこで、当方から、300万円という金額は生計の資本としての贈与になると主張しました。


弟は300万円を贈与されたこと自体を否定し、調停は不成立となり審判に移行しましたが、審判では弟に300万円の特別受益があったと認定され、その分を清算した遺産分割が命じられました。

 


【執筆者】

弁護士 佐瀬達哉

東京と大阪で弁護士として勤務した後、2008年から札幌で葛葉法律事務所を開所。
離婚、相続などの家事事件に関する解決実績多数。
相続では使途不明金や共有不動産に関する訴訟案件などにも対応。

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