CASE STUDY

相続

母が他界する数年前から私が母の介護をするようになりました。その際、母からは「好きに使っていい」と言われて母の通帳を渡されたので、そこから介護に要する費用などを支払っていたのですが、母の死後に兄から、母の預金から私が下したお金を返すように言われて困っています。

【ご相談者】札幌市 60代女性(主婦)

解決結果

使途不明金の請求をされた場合、被相続人のために支払ったことが分かる領収証等を用意して使途の説明に努めます。その上で、どうしても資料の裏付け等が残っていない支出がある場合には、その処理を調整します。

被相続人を介護している相続人によって被相続人の預貯金から生前に引き出された預貯金がある場合、適正な支出でないとして返還を請求されることがあります。これを『使途不明金』といいます。
使途不明金の問題がある場合は、遺産分割の調整をする前に使途不明金について解決する必要があります。
本件も、遺産分割の協議を進める前に、まずは使途不明金について訴訟を起こされました。


使途不明金の請求をされた場合、まずはお手元にある領収証等を集めて、通帳からの引出しに対応して説明します。
しかし、領収証の全てが適切な証拠となるわけではありません。ご依頼者様自身のお買い物と混ざっていたり、客観的に被相続人のための支出とはいえないものについては、証拠から除外せざるを得ない場合もあります。


また、資料となるのはお手元に残っている領収証だけではありません。
被相続人が施設や病院に通っていたという場合には、施設や病院に領収証の再発行等を依頼します。
食費等は領収証が残りづらいものですので、政府の統計資料から同年齢の一般的な食費等を推計します。
そのようにして、領収証が残っていない分についてもできる限り埋めていくようにします。


本件では、できる限り領収証等をかき集め、使途の説明に努めました。しかし、それでもどうしても資料の裏付けが用意できない金額が残りました。
残った金額について、返却を要しない方向で調整することも検討しましたが、ご依頼者様がそれよりは相続全体での早期解決を希望されたので、一定額を返却する代わりに相続全体の解決をすることを相手方に打診し、使途不明金を清算した上で相続全体を解決する和解をしました。

 


【執筆者】

弁護士 佐瀬達哉

東京と大阪で弁護士として勤務した後、2008年から札幌で葛葉法律事務所を開所。
離婚、相続などの家事事件に関する解決実績多数。
相続では使途不明金や共有不動産に関する訴訟案件などにも対応。

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