CASE STUDY

相続

亡父の生命保険があるのですが、死亡保険金の受取人が兄になっていました。この死亡保険金について他の相続人は何も請求できないのでしょうか?

【ご相談者】札幌市 40代男性(会社員)

解決結果

受取人が指定されている死亡保険金は相続財産とはならず、受取人がそのまま取得します。ただし、遺産の総額と比して保険金が高額な場合には、受取人の特別受益となる可能性があります。

生命保険では死亡保険金の受取人が指定されていることが一般的です。
この場合、被相続人が死亡すると死亡保険金が支給されるわけですが、それは保険契約に基づいて受取人の固有の権利として保険金請求権を取得していることになるので、被相続人の相続財産とはならず、遺産分割の対象とはなりません。


このように死亡保険金は遺産分割の対象とはなりませんが、保険金の金額が高額で、保険金の受取人と他の相続人との間に著しい不公平が生じる場合には、民法903条の類推適用により、保険金を特別受益に準じた扱いをすることがあります。

どのような場合に特別受益に準じた対象になるかですが、過去の裁判例の傾向は以下のとおりです。

①遺産総額約1億円、保険金額約1億円
特別受益になる(東京高裁平成17年10月27日決定)。

②遺産総額約8400万円、保険金額約5100万円
特別受益になる(名古屋高裁平成18年3月27日決定)。

③遺産総額約7000万円、保険金額約400万円
特別受益にならない(大阪家裁堺支部平成18年3月22日審判)。


保険金が特別受益になるとしても、保険金の受取人が保険料を一部支払っていたという場合には、保険金のうち受取人が支払っていた部分については特別受益とはならないとするのが通例です。
その場合、保険金額×(被相続人が支払った保険料額/保険料総額)で算定された金額が特別受益になると解されます。


本件では、保険金が遺産総額の10%以下だったため、上記③の裁判例と同様に特別受益にならないと解されたことから、保険金は除外して遺産分割を進めることとなりました。

 


【執筆者】

弁護士 佐瀬達哉

東京と大阪で弁護士として勤務した後、2008年から札幌で葛葉法律事務所を開所。
離婚、相続などの家事事件に関する解決実績多数。
相続では使途不明金や共有不動産に関する訴訟案件などにも対応。

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