COLUMN

『相続土地国庫帰属制度』とは

相続

2023/02/08

むかし「原野商法」という悪徳商売がありました。
人里離れた土地を細切れに分筆し、「リゾート開発等で将来値上がり確実だから」というセールス文句を使って、一区画ごとに高値で売りつけるというものです。
もちろんそんなリゾート開発はないため、手元に残ったのは場所的にも面積的にも二度と売れる見込みがない原野だけでした。

そのような原野が遺産の中にあると、相続人のうち誰がそれを引き取るかという問題が生じます。
ここで相続人全員の共有にするというのは愚策です。
基本的には、相続人のうちの誰か一人が、他の条件とトレードで渋々相続するということが多いでしょう。

ところが、『相続土地国庫帰属制度』というものができました。
これは、土地を相続した者が、一定の要件を充たした場合には、負担金を納付することで、土地の所有権を手放して国庫に帰属させることができるというものです。
負担金は「10年分の土地管理費」とされており、算定式も既に決められています。よほど広大な土地でもなければ、基本的には数十万円の範囲に収まりそうです。

ただ、これは令和5年4月27日から開始されるため、まだ実際の運用がどのようになるかは不明です。
ですが、もしかしたら今後は、遺産の中に原野がある場合、負担金を遺産から支出して国庫に帰属させるという手法がスタンダードになるかもしれません。

ちなみに、遺産の中に引き取り手のない土地がある場合、その場所の地方自治体に寄付できないかと考えることがあります。
実際に私も地方自治体に問い合わせたことがありますが、その時の回答は「よほど需要のある土地でもない限りは寄付は受け付けていない」というものでした。
地方自治体としても不良債権を抱えるようなことはできないので、当然といえば当然かと思います。

 


【執筆者】

弁護士 佐瀬達哉

東京と大阪で弁護士として勤務した後、2008年から札幌で葛葉法律事務所を開所。
離婚、相続などの家事事件に関する解決実績多数。
相続では使途不明金や共有不動産に関する訴訟案件などにも対応。