COLUMN

預金口座の凍結と葬儀費用の支払い

相続

2023/02/02

銀行などは、口座の名義人が死亡したことを知った場合、すぐに口座を凍結して入出金ができないようにします。
凍結された口座は、相続人による遺産分割が完了するまでは一切動かせなくなります。

しかし、一般的にいって遺産分割が完了するには数か月はかかることが多いです。
そうすると、被相続人の葬儀費用を遺産の預金から支払おうとした場合、葬儀会社に支払う段階ではまだ口座が凍結されていて預金を引き出すことができず、当てが外れるということになります。
そのため、被相続人が亡くなったときは、銀行に死亡の事実が知られる前にできる限り速やかにATMでお金を引き出しておいた方が良い、などと言われたりもしました。

そういった社会事情を考慮したのかどうかはわかりませんが、平成30年の法改正により、預貯金の3分の1のうち、相続人の法定相続分に相当する金額については、遺産分割を経ずとも各相続人が引き出せるようになりました(民法909条の2)。
ただし、引き出せる金額は銀行ごとに150万円までという上限があります。
150万円という上限は、いかにも葬儀費用に間に合わせるためという印象がありますが、とにもかくにもこれで遺産の預金から葬儀費用を支払うというケースが増えるのかもしれません。

 


【執筆者】

弁護士 佐瀬達哉

東京と大阪で弁護士として勤務した後、2008年から札幌で葛葉法律事務所を開所。
離婚、相続などの家事事件に関する解決実績多数。
相続では使途不明金や共有不動産に関する訴訟案件などにも対応。