COLUMN

内縁と相続

相続

2023/02/01

内縁とは、法的な婚姻はしていないけれども、実質的に婚姻と同然の生活関係にある状態のことをいいます。
内縁については、法律上の規定はありませんが、判例によってある程度の法的保護が与えられています。
例えば、離婚した際の慰謝料について、内縁の場合でも「正当な理由なく内縁関係を解消した者は、相手方に対して損害賠償責任を負う」というのが大正時代からの判例です。
離婚の際の財産分与についても、内縁関係の解消時に離婚と同様の処理をすることが認められています。
このように、内縁はできる限り法的な婚姻と同程度の保護を与えるとするのが裁判所の運用です。

他方で、内縁では認められないものもあります。
そのひとつとして、内縁の場合、相続人となることは認められていません。
よって、内縁のままだと、パートナーが死亡した時にその財産を相続することができないのが原則です。

とはいえ、これを回避するための方策があります。

まず、特別縁故者(民法958条の3)という制度があります。
これは、例えば内縁関係にある人が、家庭裁判所の審判によって、遺産の全部または一部を取得することができるという制度です。
ただし、これは被相続人に相続人がいない場合に限ります。被相続人に子、親、兄弟姉妹がいる場合は、そちらが相続人となるため、特別縁故者は認められません。

そのため、妥当な方策としては、遺言をしておくということになります。
遺言でも、もし被相続人に子や親がいる場合には遺留分の請求をしてくる可能性がありますが、遺留分は相続分の2分の1又は3分の1になりますし、相続開始から1年経過すれば遺留分の請求もできなくなります。
よって、自分にもしものことがあった場合に、パートナーに遺産を相続させる旨の遺言をしておくのが望ましいでしょう。

 


【執筆者】

弁護士 佐瀬達哉

東京と大阪で弁護士として勤務した後、2008年から札幌で葛葉法律事務所を開所。
離婚、相続などの家事事件に関する解決実績多数。
相続では使途不明金や共有不動産に関する訴訟案件などにも対応。